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SALON TALK #01

ものをつくる、生活をつくる、
これからのプラスチック。

前向きなココロとライフスタイルを ランドリーシーンから。

「フレディ レック・ウォッシュサロン」が10年という月日をかけて、日本の生活者にお届けしてきたその哲学や遊び心、ものづくりを支える作り手の想いを、プロデューサーの松延友記との対談を通じてお伝えする特別連載。
第一回は、ブランドの立ち上げ当初から共に『ランドリーバスケット』の開発・製造を手掛けてきた、プラスチック日用品雑貨メーカーのライクイット株式会社の榎田 光伸さんにお話を伺いました。

松延 フレディ レックでは、これまでブランドのものづくりのストーリーやその背景にある想いをあまり多く語ってこなかったのだけれど、10周年を迎えるにあたって、しっかりと生活者のみなさんにも伝えていきたいなという想いがあって今日はこうして対談をお願いしました。彼は、僕の高校時代の野球部の後輩ということもあって無理言って。ね ?笑
榎田 いえいえ。でも、やっぱりそれも大きいですよ。だから、こうやってまた一緒にものづくりができているのは、すごく嬉しいです。
松延 その時はまだフレディ レックのプロジェクトが立ち上がっていなかったと思うけれど、シカゴの展示会で偶然に再会して「一緒にものづくりができたらいいよね」って話もしていたんだよね。
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榎田 光伸| えのきだ みつのぶ
ライクイット株式会社 海外営業部 部長
榎田 僕の一番の記憶は、(奈良県の)明日香の山道をジョギングしたじゃないですか。そのときに松延さんが「これからはハイブリッドな素材でものづくりをしたいねん」とおっしゃっていて、その意味ってなんだろうってしばらく考えていたんです。
松延 おお。そんなこともあったねえ。
榎田 そのあとに「布には布の良さ、金属には金属の良さもあるけれど、そういった素材の特長を大事にしながらものづくりをしたいねん」とも伺って。そんな中で、ランドリーバスケットの代表としてプラスチックを選んでもらえたということが嬉しかったのを覚えています。
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松延と、榎田さん、シカゴの展示会で偶然の再会

作り手自ら「生活」を想像し、創造していく
フレディ レックのものづくり

松延 僕らは会社やブランドそのものが家庭用品の一消費者でもあると考えているから、フレディ レックで商品開発をすることになったときにも、ただの雑貨にはしたくなかった。しっかりとした洗濯用品でありつつも、ライフスタイルを提案できるブランドでありたいなと思ったときに、ステンレスや布のバスケットもあるけれど、プラスチックのバスケットがやっぱり軽くて丈夫。でも、一般的に売られているものだと、品質と価格のバランスが難しかったり、オリジナリティを出しづらいから(当時は企画部に所属していた)榎田くんに相談して。
榎田 僕らのものづくりは、デザイン・品質・機能性を重視していて、それこそ安さを追求したものづくりとは縁遠いものだったので、そういった面をきちんと評価してもらえたというのは、当時としては珍しいことだったし、誇らしかったですね。
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松延 友記 | まつのぶ ともき
フレディ レック・ウォッシュサロンプロデューサー
松延 そうそう。結構、メーカーさんにものづくりの相談に行って、ロゴを入れて欲しいとかブランドで展開したいという話をすると、「え、それって本気で言ってますか?」「そんなことが受け入れられるんですか?」と言われることも当時は多かった。ライクイットさんとランドリーバスケットをつくろうとなったときも、僕らもまだブランドを立ち上げたばかりで、なかなか何千個、何万個と発注はできなくて。もちろんそんな中で自分たちのロゴを施すなんてできるわけがないんだけれど、でも何もないのはブランドとしてどうなん?ということで、苦肉の策で出てきたのがステッカーをパッケージ(製品タグ)に入れて、お客さんに自ら貼ってもらうという。
榎田 それも、すごく新鮮で。ランドリーバスケットにステッカーが必要かというと、必要はない。笑
松延 そうだよね。笑
榎田 それでも、やっぱりシンボルが必要というブランドとしてのこだわりですよね。最初は「これで価値を見いだせるのかな」と半信半疑だったけれど、500個から製造がはじまったのが、あれよあれよと何千個という数量を達成しているので。
松延 おかげさまで数量も頼めるようになって、今ではロゴをプリントしたものを供給できています。
榎田 そういった品質のこだわりもお互いに共有できているし、ものづくりの面でも成長させていただいています。「モノだけではなくて、コトを提供する」という、使う人のためを考えた提案の仕方は、当時まだ家庭用品の業界においては一般的ではなかったので。フレディ レックさんとものづくりをしていく中で、僕ら自身がこれからものを買っていく、生活していくということを想像させてもらったし、自分たちが欲しいと思うもの、体験したいことというのを分かりやすく表現されていたので、目指すところが明確で(作り手として)すごくやりやすかったですね。
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左:2010年発売当時 ロゴ部分はステッカー 右:2020年現行品 ロゴ部分はプリント

使い捨ての価値と、10年使っていける価値。
品質を保証できる安心感さえあれば、ものの評価も変わってくる。

松延 ランドリーブランドとしてオリジナリティを出したかったので、あまり使われていない型を探していて。この『ランドリーバスケット ビッグ』は、日本のマーケットでは当時ほとんど使われてなかったんだよね?
榎田 限られたお客さんしか選ばない、日の目の当たることの少ない商品でしたね。日本の狭い脱衣所には合わないとか、洗濯はこまめにするものという固定観念も強くて、容量的に大きすぎるという評価が一般的でしたね。
松延 これよりももうひとつ背の低いサイズが良く売れていたらしいのだけれど、そんなにスペース的に大きいとは思わなかった。逆にしゃがみ込む角度が少なく済むので良さそうだし、週末にまとめ洗いとかライフスタイルも変わってきているから、大容量のほうがニーズにマッチしているんじゃないかと。
榎田 当時は、家庭にまで広まっていなかったから、実際の生活者の声は僕らも聞いたことがなくて分からなかった。でも実際にフレディ レックさんで販売されるようになると「使いやすい」と。サイズに対して悪い評価は一切聞かないですね。
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ランドリーバスケットビッグ
松延 たしかに当時のマーケットからすると高いと言われていたのだけれど、売り場に出してみるとそんなことはなくて。売る側の人間がもっと安くと思っていただけで、生活者はそれよりも「いいものであれば買いたい」と思っている人が多いのかなというのが、実感。
榎田 こうして販売していると「値段って誰が決めているの?」ということは、すごく感じますね。例えば、それが使い捨ての一回で終わってしまう価値と、5年~10年使っていける価値とで比較すると、きちんと品質を保証できる安心感さえあれば、価格の高い安いという評価も変わってくるんだろうなと思います。そういう意味では、フレディ レックさんがそういう価値観を高めてくれました。
松延 11、2年前を振り返るとマーケットはデフレのど真ん中。どこまで価格を下げるかの勝負みたいなところがあって、そこに携わっている僕らも含めて、これからどうなるんだろうって思いながらもその道を辿らなければならないような状況で。特に、その影響を受けやすかったのがプラスチック業界だったんじゃないかな。
榎田 まさに、安価な素材の代表選手みたいなのがプラスチックのイメージだったので、業界としては厳しかった時代でもありますし、世の中的にも環境問題とかが考えはじめられた頃で。そんな中、ものづくりをどうしていくか。会社として判断していかなくてはいけない岐路でもあったので、フレディ レックさんとのものづくりはすごく刺激になりましたし、いい経験でした。
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愛着あるものが「また買える」
当たり前のような安心をつくり続けたい

松延 きっちりとした品質のものづくりをする、ということを僕らも学ばせてもらいました。初めて工場にお邪魔したときに、フレディ レックのランドリーバスケットを生み出している金型をどうしても見たいとお願いして、大きな金型をわざわざ運んできてくれたことがありましたよね。
榎田 プラスチックを品質良くつくるためには、それだけしっかりとした圧力でつくらないといけないので、例えばこのバスケットのサイズに対してこれだけ大きな金型を使っているというのは、品質の安定にもつながっている保証だと言えます。フレディ レックのランドリーバスケットは、本当に丈夫につくられている、ということを直接見て安心してもらいたくて。
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ランドリーバスケットビッグのための、6トンの金型
松延 原料もね、国産のものを使っていただいていて。
榎田 屋外で使うこともあると思うので、日光や気候に対する耐久性なども考慮して、材料にもこだわって作らせてもらっています。
松延 当時はまだサステナブルという言葉が今ほど知られていなかった時代だけれど、お互いに「良いものを長く」という気持ちを持っていたのだと思うし、それが今につながっているのかも。
榎田 ものには当然寿命があるけれど、使い続けたいと思ってもらえる家庭用品であったり、道具であったり、そういう要素が備わっていないといけない。そのためにも、愛着あるものをまた買える場面をつくっていかないと。僕らが「金型が壊れたのでもうできません」というようなことでは、生活者を裏切ってしまう。そういうことにならないように金型から一生懸命ものづくりをして、販売していく、そういうことが続いていくことがサステナブルなライフスタイルにつながっていくのかなと想像しています。
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ランドリーバスケットの原料となる、国産プラスチック

プラスチックの“良いところ”を高めていく
生活者にも、地球にも、優しいものづくり

松延 そういう意味では、今後ランドリーバスケットも含めて、またこれから一緒に開発して、販売していく中で地球環境とどう向き合っていくのか。ブランドとして、一つの答えをしっかりと提示していくことが大事だよね。
榎田 そうですね。プラスチックを取り巻く環境は変化してきているし、どちらかといえばイメージは良くないのが現状なので。
松延 使い捨てとか、安価ですぐ駄目になってしまうプラスチックとかは見直さなくてはいけないけれど「プラスチック=悪」ではなくて、リサイクルできるプラスチックとか、しかもそれが耐久性があって長く使っていけるということであれば、僕はそんなに悪いことではない。家庭用品として、作り手にとっても使い手にとっても、プラスチックが魅力的な商材であることは間違いないと思うからね。
榎田 ニュースとかでも、石油という資源を使うという意味で枯渇の問題とか、二酸化炭素の問題とか、すごく取り上げられているんですけれど、その対策もしっかりと取っていきたいし、今まさに一生懸命取り組んでいる状況です。例えば、石油由来の材料が主流だったものを、植物から採れた素材でプラスチックをつくる研究があって、そういったものづくりもほぼ確立できているので、そういったことをフレディ レックさんと提案していけたらなと思っています。フレディ レックさんの場合、生活者のみなさんもプラスチックの良いところをしっかりと評価してくださっていると感じています。その丈夫なところとか、使い勝手とかを一切変えることなく、素材を見直すだけでも意味があるので、それを達成していくために我々は技術やノウハウを高めていくことで、必然的に地球環境に貢献したものづくりができるんじゃないかと思っています。
松延 また今後、10年、20年とブランドを続けていきたいと思っているし、ものづくりの面でしっかりサポートしていただけると嬉しいです。
榎田 ものづくりを理解していただいているので、すごく感謝していますし、これからもお互いにリスペクトして共に成長していければと思っています。ぜひ今後ともよろしくお願いします。
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ライクイット株式会社

ライクイットは、「これが好き」をキャッチコピーとして
生活用品ブランドとして生まれました。
ものづくりの基本は、使う人や使う時のことを考えてデザインすること。
用途にあったデザインをすることで
長く使うことができるものづくりを目指しています。
http://www.like-it.jp/