ヴィンテージを継承する喜び。
自分だけの一着を育てる、ケアの時間 〈Shinzone Preloved〉バイヤー&セールススタッフ 渡邉夏実さん

ヴィンテージを継承する喜び。<br>自分だけの一着を育てる、ケアの時間

時代を超えて愛されるヴィンテージには、前の持ち主から受け継ぎ、次へとつなぐという特別な価値がある。そうしたモノを慈しむ姿勢は、フレディ レックが提案する“ケアを楽しむ”という考え方ともリンクしています。

今回は、Shinzone(シンゾーン)が展開するヴィンテージショップ「Preloved(プレラブド)」でバイヤー&セールススタッフを務める渡邉夏実さんに、日々ヴィンテージと向き合うなかで大切にしている服との関係性や、ながく着続けるためのケアについて伺いました。

“好き”を追いかけてたどり着いた、
ヴィンテージという新しい原点

Shinzoneのスタッフ間で「ヴィンテージ博士」と呼ばれる渡邉さんですが、意外にもヴィンテージとの出会いは8年前の入社がきっかけだったそうです。

「Shinzoneに入社してから今年で8年が経ちますが、実は入社するまで一度もヴィンテージを着たことがなかったんです。」

もともとは北海道選抜に選ばれるほどのバスケットボールプレイヤーだったという渡邉さん。その頃からナイキが大好きで、ファッションへの興味はあったものの、スポーツの学校を出たからにはと、最初はスポーツ関連の職に就いたそうです。

「スポーツ関連の仕事を辞めたあと、表参道のメンズブランドでショップスタッフをしていたんです。休憩中によく隣のShinzoneに遊びに行っていて(笑)。通ううちにスタッフの方とも仲良くなって、ちょうどShinzoneがヴィンテージを扱う新事業『Preloved』を立ち上げるタイミングで声をかけていただいたのがきっかけでした。」

Prelovedは、「すでにヴィンテージとして価値があるもの」や「将来的にヴィンテージになる可能性を秘めたもの」を中心にセレクトした、ヴィンテージ&ユーズドアイテムのブランドラインおよびショップ。単なる古着ではなく、以前の持ち主に大事に使われてきた“愛されていたアイテム”にフォーカスし、Shinzoneの目利きによって厳選された一着一着が揃います。

そんなPrelovedでの仕事を通して、渡邉さんはヴィンテージの奥深さにどんどん惹かれていったといいます。

「入社当初は、右も左も分からない状態でした。だから猛勉強しましたね。お客様に提案する以上、自分が知らなければ意味がないですから。ブランドや年代、素材などを一つひとつ調べていくうちに、気づいたら夢中になっていました。」

なかでも特に心を掴まれたのが、デニムの世界。買い付けの際に1本ずつ見ていく中で、「同じものがひとつとして存在しない」というヴィンテージならではの魅力を実感したそう。

「サイズ感も生地の表情もすべて違っていて、まさに一点もの。奥が深すぎて、学べば学ぶほど面白くなっていったんです。」

“ときめき”がバイイングの原動力

バイヤーとして渡邉さんが最も大切にしているのは、“自分がときめくかどうか”。

「買い付けのときは、絶対的に自分たちが『可愛い』と思えなければ仕入れません。どんなに年代が古くて貴重なヴィンテージだと言われても、『これって本当に可愛いの?』と感じたら買いません。直感で選ぶことが多いですね。」

古着のバイヤーは一点ずつじっくり吟味する人も多い中、渡邉さんは“ときめき”を軸にテンポよく買い付けていくタイプ。

Prelovedで取り扱うラルフローレンのニット。アメリカ規格のメンズサイズをあえて女性がゆるっと着ることで生まれる、程よくくずれたシルエットが魅力。

「Prelovedのお客様は、ヴィンテージに詳しい方ばかりではなく、“可愛いかどうか”で選ぶ方が多いんです。だからこそ、自分自身が心から『これが可愛い!』と思えるものだけを仕入れたい。そうじゃないと、接客のときに本気でおすすめできませんから。『このシルエットが最高なんです!』って一緒にときめくことができる、そんな商品を届けたいと思っています。」

ヴィンテージを買い付ける日々の中で、渡邉さんが大切にしているのは「今の時代に合うヴィンテージを提案すること」。

この日のコーディネートは、ヴィンテージのリーバイスとナイキのトップスに、Shinzoneのジャケットを合わせてバランスを調整。カジュアルになりすぎないよう、革靴やスカーフなどで締めるのが渡邉さん流。

「古着を見ていると、『もっとこうだったらいいのに』と思うことがたくさんあります。だから、古着にはないものはPrelovedのオリジナルで作ることもあるんです。たとえば、白いナイロンのブルゾンは古着だと汚れが目立ってなかなか出てこない。だったら自分たちでつくろう、とか。昔の服は裏地が付いていて梅雨時期には暑くて着づらいこともあるので、今の気候に合わせて調整したりしています。」

そうした発想のヒントは、日々の接客の中からも生まれるといいます。

「お客様が何を求めているかを直接伺えるのが一番の強みです。自分で企画して、買い付けて、販売まで一貫してできるってなかなかないこと。すべての熱量をそのまま届けられるのが、この仕事の醍醐味ですね。」

渡邉さんが長年愛用しているのが、2015年にShinzoneで購入したMaison Margiela(メゾン マルジェラ)のニット。これが“マルジェラデビュー”の一着だったそう。前後で異なる素材を組み合わせた特別なデザインは、シンプルながらもディテールの美しさが際立つ一枚。10年経った今もなお美しい状態を保っている理由は、欠かさないブラシケアにあります。

「毛玉が出てきたら、そのたびにブラシでケアしています。電動のシェーバーを使う人も多いですが、繊維が切れて薄くなってしまうので使わないようにしていますね。」

ヴィンテージのデニムに対する情熱も並々ならぬもの。特にお気に入りは、初めて購入したリーバイス701。マリリン・モンローがはいていたモデルで、股上が深く、女性のシルエットを美しく見せてくれる一着です。

「保管するときは、防火・防水バッグに乾燥剤と防虫剤を入れて、洗濯した清潔な状態でしまっています。汚れを落とさずに保管すると劣化が進んでしまうので、必ずきれいな状態にしてから。経年変化や小さな傷も含めて、しっかりケアを怠りません。逆に、あえて色落ちを楽しみたいデニムはガシガシ洗ったりと、アイテムによって使い分けています。」

渡邉さん流、デニムをいたわるお手入れ習慣

そんな渡邉さんが洗うケアで愛用しているのが、フレディ レックのデニムソークウォッシュやガルザイフェ(石鹸)などの洗濯アイテム。

「デニムの洗剤はいろいろ試しましたが、フレディのものは一番仕上がりが自然で、日本の水にも合っているんです。柔らかく仕上がるので、女性でも心地よく穿けます。糊が入っていないからごわつかず、自然な風合いが残るところも好きですね。」

さらに、手洗い時にはガルザイフェとブラシを活用。リュックの汗染みやシャツの襟汚れなど、気になる部分をしっかり落とせるのだそう。

「この石鹸は本当に万能です。汗染みや皮脂汚れはもちろん、ケチャップや日焼け止めの黄ばみもきれいに取れる。香りも天然由来で、リモネンという精油が入っています。他の洗剤と混ぜても香りがケンカしないんです。」

小さなケアの積み重ねが、服の寿命を延ばし、時間とともに風合いを育てていくのです。

冬のニットをもっと心地よく。
ブラシとミストで叶える簡単ケア

この冬、渡邉さんが新たに取り入れているのが、フレディ レックのニットケアアイテム。特に気に入っているのが、クロスブラシと毛玉取りブラシ、そしてクロスケアミストの組み合わせです。

「ミストでニットを湿らせてからブラッシングすると、静電気も防げて、毛並みがきれいに整います。仕上げに目の細かいブラシで撫でると、表面がつるんとする感覚があって。着心地も見た目もぐっと変わるので、本当におすすめです。」

毛玉取りブラシで表面を整えたあと、クロスケアミストを軽く吹きかけ、クロスブラシでブラッシング。そうすることで毛並みが整い、しっとりとした質感に。

とくに静電気が起きやすく、毛羽立ちも気になる冬のニット。
ちょっとしたケアで着心地が見違えるということを、実感を込めて語ってくれました。

「洗濯も大事ですが、洗わないで気持ちよく着るというのも一つの選択肢。おしゃれ着用洗剤で毎回洗うと服にも負担がかかるし、自分も疲れちゃうじゃないですか。ブラシやミストを取り入れれば、もっと気軽に綺麗を保てると思います。」

渡邉さんは、こうしたケアの大切さをお客様にも積極的に伝えているといいます。

「Shinzoneのニットは、決して安いものではありません。でも、シーズンを象徴する一過性のデザインではなく、どれもクラシックで長く着られるものばかり。だからこそ、来年も再来年も着てほしいと思っています。このブラシで丁寧にケアすれば、長く綺麗な状態を保てますし、毛玉も気にならなくなります。ぜひ多くの方に使っていただきたいですね。」

傷や汚れも含めて、自分だけの一着に育てていく

ヴィンテージの服と向き合うとき、渡邉さんが大切にしているのは、完全な状態を求めすぎないこと。

「古着のミリタリーやアメカジ、ワークウェアって、破れていてもリペアして、それ自体がかっこよかったりする。そういう文化があるからこそ、ヴィンテージって面白いんです。」

もちろん状態のいいものを選ぶことも大切ですが、直しながら着る前提で考えると、服選びの幅も広がるといいます。

「たとえば、ちょっとした穴や汚れも“味”になることがあるし、自分の手をかけたぶんだけ、より愛着が湧いていくんですよね。完璧じゃなくても、自分の手をかけながら育てていく過程がすごく楽しいです。」

渡邉さんにとって、ケアは単なる「お手入れ」ではなく、前の持ち主から受け継いだ服を、次へとバトンのように繋いでいくための営み。

「ヴィンテージって、絶対的な個数が限られている。それを持っている自分は継承していかなきゃいけないと思っています。だからこそ、できる限りのケアをして、次に受け渡せるようにしておきたい。」

前の持ち主が紡いだストーリーを感じながら、丁寧に手入れをし、また新しい気持ちで袖を通す——。
そんな日々の積み重ねが、服と自分をやさしく育てていくのかもしれません。

 


<SHOP INFORMATION>

Shinzone表参道本店/Preloved
東京都渋谷区渋谷4-1-18



photo:Mai Tanaka
text:Yukari Fujii


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